インフラ分野のDXの現状
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最近、DXという言葉をよく耳にするけど、建設業に関するDXとはどういったものなのだろうか?
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インフラ分野のDXの取組はどれくらい進んでいるのだろうか?
このような疑問を持つ建設業関係の方々は最近多いのではないでしょうか?
そうした疑問に答えるため、技術系の国家公務員として、インフラ分野のDXの業務に多少関わらせて頂いている立場から、「インフラ分野のDXの現状」について、紹介させていただきたいと思います。
本記事の内容
結論から申し上げると、インフラ分野のDXの取組はまだ始まったばかりです。
国土交通省において、令和2年7月に検討会が立ち上げられ、今年1月に「インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の施策一覧」がとりまとめられ公表されました。しかし、実際に取組が本格的に進められていくのはこれからとなります。
(インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の施策一覧)
https://www.mlit.go.jp/common/001385990.pdf
一方、民間企業においては、大手の建設業者で先進的な取組が進めらていますが、全体としてはまだまだこれからの状況です。地場の建設業者では、ICT機器の初期投資にお金がかかることなどから、DXの取組は思うように進んでいません。
インフラ分野のDXの概要
インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、 インフラへの国民理解を促進すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現する取組。
インフラ分野のDXに取り組む背景
近年、激甚化する災害への対応やインフラの老朽化対策の必要性が高まる一方、今後、建設業界では深刻な人手不足が進むことが懸念されています。
これを受け、国土交通省では平成28から ICT 技術の活用等による建設現場の生産性向上を目指す i-Construction を推進してきました。また、新型コロナウイルス感染症発生を契機とし、公共工事の現場において非接触・リモート型の働き方に転換するなど、感染症リスクにおいても強靱な経済構造の構築を加速することが喫緊の課題にもなってきました。
こうした状況を踏まえ、インフラ分野のDXを推進するため、国土交通省は、令和2年7月に、技監を本部長とする「インフラ分野の DX 推進本部」を設置し、取組について検討を開始しました。
インフラD Xの効果
インフラ分野のDXの取組事例
インフラ分野のDX推進の取組としては、一番イメージしやすい事例は、橋などのインフラの建設現場の状況を発注者が現地立ち合いをして確認する場面のDXだと思います。
これまでは、発注者側の発注事務所職員が、車等で時間をかけて施工現場まで移動し、現場状況の確認を行なっていましたが、DXが進めば現場まで行かずともICT機器を活用して発注事務所と施工現場をつなぎリモートで、施工現場の状況を確認することが可能になります。
こうしたことが可能となれば、発注者側は現場までの移動時間が浮いてくるため、その時間を活用してその他の業務等を行うことが可能になります。
また、発注者と受注者は非接触となりますので、新型コロナウイルス感染症の対策にもなります。
インフラ分野のDXとi-Constructionの違い
i-Construction(アイ・コンストラクション)とは
「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組。
i-Constructionは、「ICTの活用により、建設生産システム全体の生産性向上を図るという建設現場に着目した取組」であるのに対して、インフラ分野のDXは、「データとデジタル技術を活用して、社会資本や公共サービスを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革する取組」であることから、i-Constructionより広い概念を指すものであると考えられます。
国土交通省における取組状況
令和3 年4 月1 日に国土交通省本省・国土政策総合研究所・地方整備局等が一体となりインフラ分野のDXの取り組みを推進するため、「インフラDX 総合推進室」を発足が発足されました。
また、本省、国総研、地整等を超高速回線で接続し、新たな働き方の実践と先端技術の学び・体感のため、インフラDXルームが整備されました。
Web会議やサテライトオフィスとしての活用、AR・VRの活用による民間先端技術の体験や、
大容量・高速通信ネットワーク活用により現場とのコミュニケーションができる施設として活用が見込まれています。
地方整備局においては、インフラ分野のDXを推進する組織として、関東、中部、近畿、九州の4地方整備局に、インフラDX推進センターが設置されました。
各地方整備局の技術事務所には、ICT機器などが整備されたインフラDXルームが整備されました。これらの施設を活用し、インフラDXに係る情報発信、BIM/CIMモデルの操作やICT(情報通信技術)建機を用いた無人化施工など様々な研修を通じて人材育成を行なっていく予定です。
研修は、国土交通省の職員だけでなく、地方公共団体の職員や地域の建設業に携わる技術者も対象に実施される予定です。
<各地方整備局の研修施設>
施設名:DX・i-Construction人材育成センター
場所 :関東技術事務所(千葉県松戸市)
施設名:近畿インフラDX推進センター
施設名:中部インフラDXセンター
施設名:九州インフラDX人材育成センター
場所 :九州技術事務所(福岡県久留米市)
<DX推進センターで開催予定の研修例(近畿DX推進センター)>
地方公共団体における取組状況
「埼玉県のデジタルトランスフォーメーション推進計画」、「愛知県のあいちDX推進プラン2025」など、行政のデジタル化やデータ活用の推進、県域全体のデジタル化に向けた支援などDX全般の取り組みについて計画が策定されている地方公共団体はありますが、インフラ分野のDXに特化して取組はまだまだ検討が進んでいない状況だと考えられます。
建設業者における取組状況
<大成建設株式会社>
トンネル工事の現場では落盤や土砂崩れ、火災などの大事故が発生する可能性が高く、こうした現場においての労働環境の安全・安心の実現は必須の課題です。この課題に対して、大成建設はWireless City Planningとソフトバンクと協力し、トンネル工事現場の安全・安心な労働環境実現に向けた実証実験を2019年12月に実施しています。
<鹿島建設株式会社>
鹿島建設では、DXへの取り組みとして2025年の達成を目標に「鹿島スマート生産ビジョン」を策定しています。
この取り組みの背景には、建築業界全体が直面している建築就業者不足の解消、そして働き方改革の実現という課題があります。
現在、建築現場においては、週6日の作業、つまり4週4休の休日環境が一般的とされています。鹿島建設では、これを、4週8休に改善しつつ、作業員の収入を製造業と同程度の水準まで高めることを目標として同ビジョンを策定したのです。 このビジョンでは、「作業の半分はロボットと」「管理の半分は遠隔で」「全てのプロセスをデジタルに」という3つのコンセプトをコアに、ワーク(作業)・マネジメント(管理)・エンジニアリング(生産プロセス)の分野それぞれで業務効率化、省人化、生産性向上を目指しています。