インハウスエンジニアの部屋

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やる気はないけど、能力が高い人がリーダー向き?〜モルトケの法則〜

モルトケの法則」をご存知でしょうか?

先日何気なく同僚と話していた時にとても興味深い話を聞いたので紹介します。

 

<同僚との会話>

ドイツの軍人だったモルトケって人がいるんだけど、その人が考えた「モルトケの法則」って知ってる?

いや、知らない。

「やる気」、「能力」の2軸で高い低いがあるとして、一番リーダーに向いているのはどういう人だと思う?

それはやっぱ、やる気があって能力が高い人なんじゃない?

それが違うんだよ。あくまでも軍隊での話なんだけど、リーダーに向いているのはやる気がなくて能力が高い人みたいだよ。

そうなんだ〜。意外だな。

やる気がないけど能力が高い人は、どうしたら余計な労力をかけずに成果を出せるかをよく考えるのでリーダーに向いているみたいだよ。やる気があって能力が高い人は、現場の指揮官みたいなのが向いているんだって。

ヘぇ〜。でもなんとなくわかる気がする。

逆にやる気がなくて、能力も低い人は、現場の兵隊みたいなのが向いているみたいだよ。じゃあ、やる気があるけど能力が低い人はどんな役割が向いていると思う?

うーん・・・、もしかして何もしない方が良い?

正解!やる気があるけど能力が低い人は、間違った方向に行動するので軍隊にとってはマイナスでしかないみたいだよ。すなわち何もしない方がマシってこと。

確かに(かなり納得)。会社の中でも空回りしちゃってる人いるよね。

 

この同僚との会話で知った「モルトケの法則」は、会社組織の中でも当てはまるなと妙に納得してしまいました。

そこで、そもそも「モルトケの法則とは何か」と、「モルトケの法則を知って考えたこと」についてあ紹介したいと思います。

 

本記事の内容 

  

モルトケの法則とは 

モルトケ(Helmuth Karl Bernhard Graf von Moltke,1800年10月26日〜1981年4月24日)は19世紀のプロセインの軍人です。参謀という職種を確立した功績で軍事学上知られており、我が国にも日露戦争に関連して影響を与えた人物です。

モルトケは人材を「やる気」と「能力」の2つの観点から4つの類型に分類しました。

下図の通り、「やる気」のある/なし、「能力」の高い/低いからなる2次元のマトリックスです。

そして、モルトケは組織にふさわしい人材は「やる気のない、能力の高い人材」と考えました。

その理由は、「やる気のある、能力の高い人材」は自発的に課題や問題を考え、解決に向かって行動するので、上位者の指揮命令が有効に実施されないということでした。

これを「モルトケの法則」と言います。

この考え方は、あくまでも軍隊において優秀な人材とは何かということを考えたものだということに留意は必要です。

軍隊においては、少しの判断ミスが、多くの人の命に関わるので、そういったミスが許されない過酷な状況下での当てはまる法則だと考える必要があります。

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モルトケの法則」の概念図

分類①やる気なし、能力高い(LM _HA人材)

 適正:組織の経営者(軍の参謀)

分類②やる気あり、能力高い(HM_HA人材)

 適正:現場のマネージャータイプ(軍の司令官)

分類③やる気なし、能力低い(LM_ LA人材)

 適正:平社員(兵隊)

分類④やる気あり、能力低い(HM_ LA人材)

 適正:何もしない方が良い(役立たず)

 

モルトケの法則を知って考えたこと 

一般論で考えると、やる気がなくて能力が低い人は、どうしようもなくて救いようのない人のように思えます。

しかし、上司から指示されたことは、淡々と可もなく不可もなくこなすという点では組織の中では役に立つ存在なのかもしれません。

簡単だけどやらなければいけない仕事は組織の中には山ほどあります。

一方、やる気はあるけど、能力が低い人は、やる気があることが救いのような気がしますが、能力が低い故に考えて行動したことが間違っていて、周りの人に迷惑をかけたりとマイナス要因になることも認識しておく必要があります。

 やる気があるというのは、どんな場合も「善」という良いイメージがありましたが、必ずしもそうではない場合があると思いました。

やる気があって物事を進めようと熱くなっている時こそ、少し冷静になって客観的に物事を考えて、「これをやったら他の人にどのような影響が出るのだろうか」と一歩立ち止まって考えて行動することが重要だと思いました。

あとは、「モルトケの法則」は軍隊において当てはまる法則なので、現在の会社組織では当てはまる条件下とそうでない場合があるということです。

現代の会社組織においては、社会が複雑化・多様化していますので、当てはまる条件というのは少ない気がしますが、事件・事故や災害対応などの非常時では「モルトケの法則」が当てはまるのかなと思いました。

 

 

参考文献

マルチエージェントシミュレーションによる”モルトケの法則”の有効性検証(帝京平成大学 磯部 大)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmin/2017f/0/2017f_313/_pdf/-char/ja