インハウスエンジニアの部屋

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「『辞める人・ぶら下がる人・潰れる人』さて、どうする?」組織が抱えている課題(組織の病巣)を改善に導く「指南書」

産業医経営コンサルタントであり、「組織の病巣を見抜くプロ」である著者「上村紀夫」さんが書いた「『辞める人・ぶら下がる人・潰れる人』さて、どうする?」という本についてご紹介します。

  • 離職が相次ぎ、採用にも苦戦。慢性的に人手不足
  • みんな、心身ともに疲れが溜まっている。休職者も発生
  • 職場の雰囲気が良くなく、人間関係のトラブルが勃発
  • やる気がないが離職もせず、組織にぶら下がっている人がいる
  • 「給与や待遇が不公平」「配属に納得できない」など、不満の声が多い
  • 通常業務と教育・管理業務の並行で、マネージャー層が疲弊

著者の上村さん曰く、これらのうち、1つでも当てはまったら要注意!

あなたの組織は”病”に犯された状態だそうです。

この本は、組織が抱えている様々な課題(組織の病巣)を改善に導く「指南書」です。

『組織の病巣』が発生する原因が「マイナスの感情の蓄積」であるというメカニズムを理解し、『組織の病巣』を最も効率よく取り除くための「ターゲティング戦略」(対応すべきターゲットを絞ることで、効率よく組織課題を解決する方法)を学ぶことができます。

  • 「会社を良くしたい」と切実に思う経営者や人事担当者
  • 「チームに活き活きとした雰囲気をもたらして生産性を上げたい」と思っているマネージャー・チームリーダー
  • 「自分や身近な人のココロが組織から離れている」と感じている人

などにおすすめの1冊です。

この記事では、本を読まなくても、組織課題の原因となる「マイナスの感情」の発生メカニズムと「組織課題を改善する方法」の概要がわかるようポイントを絞ってご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。

 

1.組織の課題を生み出す原因は「マイナスの感情の蓄積」

(1−1)マイナスの感情の発生原因

私たち個人が抱える、「あきらめ」、「落ち込み」、「疲労」、「不安」、「虚しさ」、「妬み」、「怒り」といったマイナス感情は、どのように発生するのでしょうか?

例えば、わかりやすいのは給料の金額です。

ある人が会社に求める対価が「30万円」だったとして、実際に会社から得られる対価が「26万円」だとしたら、その差の「4万円」こそがマイナス感情発生の原因となります。

「もっと貰えてもいいのに」といった不公平感、「給料、今年も上がらなかった」と言った虚しさがマイナスの感情です。

  • 給与はこれぐらい欲しい
  • 仕事の量や時間は、これぐらいがちょうどいい
  • 雑談が多くて和気あいあいとした職場環境がいい

誰もが会社や職場環境に何かを求めて仕事をしています。

ただ、現実には、何もかも社員の望み通りにはいきません。

社員が求めているものよりも、会社が与えているものが少ないことがあります。

反対に、社員が求める以上のものを、会社が与えていることもあります。

社員が求めるものと、会社が与えられるレベルの「差」がマイナス感情発生の要因となります。

それでは、社員が求めるものと、会社が与えられるレベルの「差」はなぜ発生するのかというと「労働価値」という概念がポイントとなってきます。

「労働価値(仕事に何を求めるか)」は人それぞれ異なり、どのような労働価値を持っているかによって、仕事に関する様々事象に対し、プラス感情を抱くか、マイナス感情を抱くかが変わってきます。

 社員の労働価値と会社が提供できる労働価値にミスマッチの状態だと、マイナスの感情が発生しやすいと言えます。

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労働価値

(『辞める人・ぶら下がる人・潰れる人』さて、どうする?の記載を参考に作成)

会社側の視点で考えると、採用した学生が離職するリスクを少しでも減らしたいのであれば、労働価値が一致するまたは近い学生を採用することが重要と言えます。

労働価値と離職の関係については、以前のブログで記載しているので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 

(1−2)マイナスの感情の発生対象は「個人活性3要素」

「心身のコンディション」、「働きやすさ」、「働きがい」は、「個人活性」と言い、この3要素は人が活き活きと働けるかどうかを決めています。
「個人活性3要素」はピラミッド構造となっており、根底にある心身コンディションがグラつくと、働きやすさ、働きがいも崩れるように、1つダメージを負うと他の要素も影響を受けます。

マイナス感情が蓄積し、個人活性3要素のバランスが崩れると、離職やメンタルダウン、やる気の低下などの問題が発生します。

逆に言えば、この個人活性3要素がバランスよう満たされている社員は、快適な職場で、元気に、前向きに仕事ができていると言えます。

蓄積による問題を深刻化させないためには、個人活性3要素のどこが痛み、他の要素にどのように影響し、問題がもたらされたのか、蓄積プロセスを理解することが重要です。

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個人活性3要素

(『辞める人・ぶら下がる人・潰れる人』さて、どうする?の記載を参考に作成)

 

(1−3)離職は全てが「悪」というわけではない

離職には大きく分けると以下の5タイプがあります。

個人活性3要素が影響する離職

積極的離職:自分の希望を叶えるための離職

消極的離職:今の環境から逃れるための離職

離  脱:心の健康の悪化で働けなくなること

その他の離職

自己都合 :家族の転勤、出産育児などライフイベントによる離職

会社要因 :解雇、退職勧奨、整理解雇による離職

 

個人活性3要素と離職タイプの関係をまとめると以下のようになります。 

○積極的離職

 「働きがい」が傷んでくると、発生リスクが増加。さらなるやりがいを求めて次の会社に「ステップアップ」していくという離職。

○消極的離職

 「働きやすさ」が低下していくと、発生リスクが増加。「もうこの職場では働きたくない」という「現状からの回避」としての離職。

○離脱

 「心身コンディション」の悪化が起きると、発生リスクが増加。メンタルダウンや身体疾患などにより休職や退職せざるを得なくなること。

「働きがい」が低下し、「働きやすさ」ばかり向上した場合に起きやすくなる『消極的定着』=『ぶら下がり』は、組織活性を低迷させ、ますます会社をダメにしていくので、なるべく防止する必要があります。

しかし、離職はすべて「悪」というわけではなく、「誰が」、「どんな」理由で離職しているかを踏まえ対策を打つことが重要です。

離職ゼロを目指すのではなく、離職最適化を目指すというのが正解です。

むやみに「働きやすさ」を追求せず、自社が求め、大事にしていきたい人物像を明確にし、その人材が「働きやすく」かつ「働きがい」を持つことができる職場を目指すべきです。

 

2.組織の病巣を取り除き組織を改善に導く施策

(2−1)より良い組織に導くための方向性

より良い組織にするためには、現状の組織活性がどうなっているかを把握し、「心身コンディション・働きやすさ・働きがい」の 3 要素のバランスを保つための施策を講じることが重要です。
 プラスの感情を発せさせる施策の効果は一時的であるため、マイナスの感情に着目し施策を実行することがポイントです。

(2−2)ターゲティング戦略

前述の通り、何に「マイナスの感情」を抱くかは部署や職員、個人的な背景など様々な要因に左右されるため、幅広い対象をカバーした施策は、全員に対して有効的に機能しません。
組織課題を最も効率よく取り除くためには「ターゲティング戦略(対応すべきターゲットを絞ることで、効率よく組織課題を解決する方法)」が有効です。

 ターゲティング戦略 「組織活性」を上げる人材を明確に設定し、他の人材層と差をつけてその人材層の育成と定着に注力する施策。 ターゲティング戦略は、Who、What、Howを意識して実施していくのがポイントです。

Who : 誰に向けた施策なのか
What : どの課題に優先的にアプローチしたいのか
How : どのようにアプローチするか

組織戦略を実施する際には人材のセグメンテーションを行い、「どの人材のセグメントのマイナス感情を解消すると、効率よく会社的にプラスの効果が伝染するか」を検討し、取り組みの順番をしっかり設定していくことが重要です。

この本では、離職対策の際、最優先すべき人材セグメントは「ハイポテンシャル人材(3〜5年度に優秀人材になるであろう20代後半〜30代中盤の若手社員)」と記載されています。労働価値が比較的固まっていて対策が練りやすい上、優秀人材の穴埋めや、立ち上がり人材の身近なモデルケースにもなりうるというのが理由です。

実際に、各会社で組織課題の改善施策について検討する際には、検討課題が「離職」であれば、どういった属性の社員がどのような理由で離職したのか「離職マップ」を作成し、「会社のタイプ」を特定そした上で、どの層にターゲットを絞って施策を実施していくかを検討する必要があります。

 

3.まとめ

  • 組織の課題を生み出す原因は「マイナスの感情(不満や不公平感)の蓄積」。社員が求めるものと、会社が与えられるレベルの「差」がマイナスの感情を発生させる。
  • 「労働価値(仕事に何を求めるか)」は人それぞれ異なり、どのような労働価値を持っているかによって、仕事に関する様々事象に対し、プラス感情を抱くか、マイナス感情を頂くかが変わってくる。
  • マイナスの感情の発生対象は、「個人活性3要素」心身コンディション・働きやすさ・働きがいの3つに分けられる。これらの3要素が「人が活き活きと働けるかどうか」を決めている。
  • 離職はすべて「悪いこと」というわけではなく、「誰が」、「どんな」理由で離職しているかを踏まえ対策を打つべきである。
    ⇒ 離職ゼロを目指すのではなく、離職最適化を目指す。
  • より良い組織にするためには、現状の組織活性がどうなっているかを把握し、「心身コンディション・働きやすさ・働きがい」の 3 要素のバランスを保つための施策を講じることが重要。
    ⇒ プラスの感情を発せさせる施策の効果は一時的であるため、マイナスの感情に着目し施策を実行することがポイント。
  • 前述の通り、何に「マイナスの感情」を抱くかは部署や職員、個人的な背景など様々な要因に左右されるため、幅広い対象をカバーした施策は、全員に対して有効的に機能しない。
  • 組織課題を最も効率よく取り除くためには「ターゲティング戦略(対応すべきターゲットを絞ることで、効率よく組織課題を解決する方法)」が有効。

この記事では、ポイントを絞ってお伝えいたしましたが、実際に本を読んでもらうと、どの離職タイプが多いかによって会社ごとにタイプを分類し、その会社タイプごとの改善施策の方向性などがより詳しく記載されています。

もっと詳しく組織課題の改善方法について知りたい方はぜひご覧ください。

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